心地よい居場所と心のケア~子どもたちとママさんの笑顔を育むフリースクール~

執筆者 | 23年08月23日 | インタビュー, 和光市広沢エリアマネジメント広報部

こちらは、和光市広沢複合施設「わぴあ」のnoteにて掲載されているインタビュー記事になります。

谷田貝さん:

本日インタビューをさせていただきます谷田貝と申します。まずは、ふせさんご自身について教えていただきたいので、自己紹介をお願いいたします。

ふせさん:

初めまして、ふせけいこと申します。生まれは岩手県です。和光市に来たのが5年前になります。和光市の前は、夫の仕事の関係で福岡にいました。家族構成は、夫と子どもが二人。一人は小学5年生、もう一人は幼稚園の年中です。

今やっていることはママさん向けの心理カウンセリングと、親子関係がちょっとスムーズにいかない悩みをお持ちの方向けに親子関係の講座をオンラインで行っています。なので、日本全国、たまには海外在住の日本人の方ともお話しさせていただく機会があります。

長女が不登校になって2年ぐらい経ちましたので、そんな子どもの居場所があった方がいいなと思ってどこか探していたのですが、近場でなかなか見つからなかったので自分で作っちゃおうと思い、2023年5月から本当に小さくフリースクールを始めました。

谷田貝さん:

フリースクールは、どういった方々で運営されているのですか。

ふせさん:

運営は私と、ボランティアさんの力をお借りしています。フリースクール自体はNPO法人わこうフードネットワークの事業の一つとしてやっています。子どもの居場所をつくろうということになって、メンバーや地域のみなさんのサポートを受けながら立ち上げました。

谷田貝さん:

フリースクールを通じて子どもたちのケアをしていきたいと思ったのですか。

ふせさん:

そうですね。子どもの1年は大人の1年に比べてとっても密度が濃く、大切な時期だと思っています。お家にいることも経験で、その子の人生に役立つと思うのですが、長女からはは「学校には行けないけれど本当はお友達と遊びたい」という声をよく聴いていました。ちょうどそんな時、2023年2月末ぐらいにお話しをいただき、小さくでもいいから一刻も早くスクールを始めたいと思い、同年5月に始めました。

きっと長女と同じような境遇のお子さんがいると思ったので、まずは、ほっとできる居場所を作りたいと思っていました。わが子が学校に行けていない時「うちの子は学校に行けるのかな、就職できるのかな、引きこもりにならないかな」と親御さんはご心配だと思います。

当事者の子どもは、自分が行けていないことに負い目を感じていたり、あたふたしている自分の親を見て申し訳ないと思ったりもしています。学校に行っている友達を見て、なぜ同じように出来ないか、などいろいろな葛藤があって疲れちゃったり緊張しちゃったりする子が多いのかなと思います。

なので、ほっとしてもらい、学校に行けてない今の自分でもいいよね、ここに居ていいよねと思えるような場所を作りたかったのです。

谷田貝さん:

過去に比べて、内向きのお子さんが増えてきているのは環境によるものもあると思いますか。

ふせさん:

そうですね。私は昭和から平成初期に子ども時代を過ごしてきたのですが、やっぱりその頃に比べると子どもが自由に遊べる場所が少なくなっていると思います。

例えば、岩手の田舎と和光市ではそもそもの違いがあるかもしれませんが、私が小さい頃は、お家とお家の間の側溝を友達と探検していました。今は時代の流れもあってこういった遊びは難しいと思いますし、外で遊べる場所は整備された公園などに限られている。危険は少なくなりましたが、自由度は昔よりは低くなっているように感じます。少しだけハメを外して「ああしたい」「こうしたい」とトライ&エラーを楽しめる場所がリアル空間には少なくなったので、ゲームの世界やオンラインの世界になってしまうのかなと個人的に思っています。

失敗を許される安全がある環境であれば、子どもはトライ&エラーすることが好きですからね。

ゲームやオンラインのデメリットはご存じの通りかと思いますが、メリットは、人に干渉されない安全な場所や、自分が主人公になれる場所を選べるところだと思います。また、使い方によっては学校に行かなくてもコミュニケーションのツールになると思いますし、ゲームの中であれば友達や知らない人とでも気軽に話ができ、その意味では安心できる場所のひとつになっているのかなと感じています。

谷田貝さん:

どのように学校に行けていないお子さんのメンタルケアを行っているのですか。

ふせさん:

まずは、勇気づけ。「話したくない」も含めてありのままのお子さんの気持ちを聴いて、良い関係を作ることから始めます。これは、わが子に対しても同じで、揺らぐこともありますが、味方ポジションでいることは心がけています。

正直なことを言うと、私も行けるのならば学校に行って欲しいという気持ちはあります。でも、行って欲しい気持ちはあくまでも私の気持ちで、子どもには子どもの気持ちや葛藤があるんですよね。自分の不安解消で学校に行くことを促すのではなく、子どもの行きたいのに行けない状況にまずは寄り添いたいと思っています。

あとは、まずは私自身がこれまでのベキ・ネバから自由になって視野を広げてみることでしょうか。たしかに学校に行くことが戦後の王道だったと思うんです。私もそうでした。でも、今は少しずつ多様化していて、他の道も増えてきているように思えます。自分が歩いてこなかった道を選択肢に加えるのは、勇気がいりますけどね。

とはいえ、親も行って欲しい気持ちを堪えると辛くなってしまうので、子どもも自分の気持ちを言える状況下で「ママはこういう気持ちだよ」と伝えるようにしています。

それでも感情的に怒ってしまう時もあるのですが、そういう時は「ごめん。ママどうかしてた。ママが怒ったのは○○ちゃんのせいじゃなく、ママの気持ちの問題だった。理不尽に怒ってごめんね」と謝るようにしています。

こんな風に自分がモヤモヤしてしまう時は、自分のコンデイションが良くない時が多いんですね。疲れていたり、寝不足だったり、別口で悩みを抱えていたり、自分に厳しすぎたり。なので自分のメンタルが健康でいられるように、自分を労ったり、甘やかしたり、私自身が定期的にカウンセリングを受けてメンタルをケアしています。

谷田貝さん:

ママさん向けのカウンセリングはどのようなことを行っているのですか。

ふせさん:

私のところに来る人は、愛情深く、とても頑張り屋さんなママさんが多いです。お悩みは、お子さんの不登校に限らず夫婦関係などの対人関係、お仕事のことなど様々な方々がいらっしゃいます。

そして、共通していることは愛情が深いからこそ「こうしなければいけない」「ああしなければいけない」に、がんじがらめになっていることです。

例えば、ごはんはママが作らなければならないとか、夫婦喧嘩をしないように自分がガマンしなければならないとか、誰かに頼っては行けないとか、無意識なベキネバを沢山お持ちなんですね。

で、実はそこにはその方の「価値・魅力・才能」という宝物が眠っているので、お話をお聴きしていく中で、クライアントさん自身が気づいていかれるアプローチをしています。その結果「ベキ・ネバ」がいつの間にか緩んで、お悩みが解消して笑顔が増えていかれますね。

時間はかかりますが、こんな風に自分を受け入れられると、ご自身のお子さんやご主人、苦手だった人との関係もどんどん変わって、大げさではなく人生そのものが変わってくるんですね。私はその変化を見せていただける立場なので、そこにとても喜びを感じています。

谷田貝さん:

ママさん以外の方にもカウンセリングを行っているのですか。

ふせさん:

もちろん、必要としてくださる方であればどなたでもお話をお聴きしています。ただ、「○○屋さん」というような看板をした方が分かりやすいので、ママさん専門のカウンセラーとして名乗っています。

たまに独身の方や、不登校ではないけど相談をしたい、という方もいらっしゃいますので間口を広くカウンセリングしています。

谷田貝さん:

どういった想いや価値観を持ってフリースクールを運営しているのですか。

ふせさん:

「その人がやってみたいことを叶える」ということを価値観として持っています。そのためには「やりたい」を言える環境が大切だと思うので、まずは安心感をつくるようにしています。

具体的には、学校は行くのも行かないのも選択肢の一つ、というスタンスを持っています。やりたいことに注目し、やりたくないことにこそ耳を傾けることを意識しています。

谷田貝さん:

フリースクールの活動をしている中で嬉しかった出来事などはありますか。

ふせさん:

ある時、来所したお子さんがカードゲームで遊んでいました。私が近くに行ってカードについて質問した時に、それまで伏し目がちがったその子が顔を上げて私の目を見て、いきいきとそのカードについて説明してくれたことがありました。「一緒にやってみますか?」と言ってくれて、やり方がチンプンカンプンな私に、丁寧に何回も説明してくれたり、説明動画も見せてくれたんですね。

その子の世界に入れてくれて、イキイキとその子の「好き」を語ってもらえたことを、私はとても嬉しく思いました。

谷田貝さん:

逆に、しんどいことや辛かったことなどはありましたか。

ふせさん:

ありがたいことに多くの方々にサポートをしていただき、まだそのような状況に遭遇したことはないです。ただ、私一人だときっと力不足だなと思うことは、スタッフさんの数です。これまではプレオープンでしたが、10月からはいよいよ本オープンなので、お子さんに理解のある方にお手伝いをしていただけたらなぁと思っています。

谷田貝さん:

フリースクールで挑戦したいことや、ふせさんご自身のビジョンや目標などはありますか。

ふせさん:

今は週1回開催なので、「ひだまりスペース」だけでできることは限られていると思います。なので、フリースクールの展望として、できれば地域の子どもの居場所と連携していきたいと思っています。

また、居場所を作ってみたいと思う方々のモデルとなり、ノウハウなども共有できたらとも思います。

そしてもうすぐお知らせするのですが、親子向けの講演会の予定があります。不登校経験のある現役大学生とそのお母様に講演をしていただきます。こういった情報も皆さんにお知らせしていきたいと思っています。

個人的には「学校に行って大人になることもありだし、それ以外の道を通って大人になることもあり」だと思っています。それ以上に大切なのは、どこを目的地としているかだと思います。学校に行くことがメインストリートだとすると、実はサイドストリートもたくさんあって、選択肢を複数持てる環境を整えていきたいと考えています。

それと、私の本業はカウンセラーなので、いきいきと自分らしく生きるママさんが増えるように活動をしていきたいです。欧米においては、メンタルケアは一般的で、例えば、場所によっては大学生は週1回自分のメンタルを整えることをやっています。日本でもメンタルを整えることが、美容院に行くことや、マッサージを受けることのように一般的なものになるといいなと思っています。

谷田貝さん:

最後に読者の方に、何かメッセージはありますか。

ふせさん:

今の時代って、大人も子どももみんな一生懸命気を張って生きている時代だと思います。でも、気を張り続けていると、ある日ポキっと折れてしまうと思います。

なので、折れてしまう前に「疲れちゃったよね」「たすけてほしい」など、言い合える相手や場所があることが、自分自身を守るためにすごく重要ではないかなと思います。それが例えば、家庭だとするとエネルギーをもらえるし、自分が一番素に戻れる場所だと思います。

とはいえ、気負って頑張り続けるひとの中には「疲れちゃった」「たすけて」を封印している方も沢山いらっしゃると思うんですね。大切なわが子が学校に行けていない状況であれば、それは尚更かもしれません。

ひだまりスペースは、そんな親御さんが「疲れちゃった」「たすけて」を言ってもいい場所でもあります。

学校に行けていない我が子を見て、何かモヤモヤするなと思った時には、毎週月曜日にフリースクールをやっていますので、覗きにいらしてくださいね。

谷田貝さん:

ありがとうございます。会場の皆さん、ふせさんに何かご質問などはございますか。

質問①:

困っているお母さんに声がけやアドバイスの仕方などはありますか。

ふせさん:

私の場合ですと、まずは、お相手のお話しをできるだけ先入観を入れずにお聴きすることを心がけています。その上で質問されたときにはじめて、「私だったら・・・」とお伝えすると思います。あとは、お相手がなにか言いたげだなと私が感じたときは、「なにかお困ごとがありますか?」などと質問から始めてみることもあります。

質問②:

「やりたいことを叶えてあげる場所を提供する」とお話がありましたが、ご自身のやりたいことは叶えていらっしゃいますか。

ふせさん:

はい、おかげさまで少しずつ叶っています。例えばお仕事面ですと、私は元々は会社員をしていて、それこそ、ずっと堅実に会社員をしなければいけないと思っていました。

ですが、「ベキ・ネバ」を手放していった結果、実は「できなかったら恥ずかしくて誰にも言えないくらい本当はチャレンジしたかった」親子関係や心を扱うことをお仕事にできています。

質問③:

自分のやりたいことをやるように変わった転機はありましたか。

ふせさん:

転機は、次女の出産の時です。産後の肥立ちが悪く一週間以上40度以上の高熱が続き、死を意識したことがあります。その時に、まだ死ねない!子ども達も育てあげたい!なにより私の人生まだなにもやっていない!という思いが湧いてきました。

それから、夫に気持ちを打ち明け、ライスワークの会社員は卒業し、もともと興味を持っていた心のことと、親子関係の学びを始めることにしました。

というのも、私はわが子は大切なのに、子育てがとても苦しかったんですね。こう見えて、意味もなくイライラして、夫や子どもに八つ当たりするママでした。子育てのやり方が悪いのかな、子どもへの愛が足りないのかな、人としてダメなのかな、とさんざん悩みました。

すると、どうやら子どもの頃に無意識に身に付けた強い思い込み「ベキ・ネバ」が関わっていることに辿りつきました。当時、アドラー心理学ベースの親子関係や夫婦関係がスムーズになる講座を学んでいて、知識はもちろんですが、共感や勇気づけを毎回してもらっているうちに、自分自身がすごく楽になりました。イライラや八つ当たりの頻度がグッと減ってきたんですね。私が楽になると、家の中の空気感が軽くなって、家族がチームのように育っていくことに気づきました。

あぁ、そうか。ママが「ベキ・ネバ」から自由になると家庭が平和になるんだな。家庭が平和だと、子ども達は安心して子ども時代を過ごせるんだな。夫婦関係も良くなるんだな。この循環を広めていきたいなと思い、今の仕事を始めました。

どういう形で進んで行ったのかというと、わりと泥臭いです。カウンセラーの根本裕幸さんに弟子入りをしたり、子どもの寝かしつけが終わった後で、勉強したり自分の想いや失敗経験をブログにひたすら綴りました。ありがたいことに、ブログで書いた内容に共感してくださった方が、講座やカウンセリングに来てくださっています。 

ふせさんの活動に対する想いや、お子さんや自分自身に対して正面から向き合う誠実さを、感じました。これからのふせさんのご活躍、フリースクール「ひだまりスペース」の活動拡大を期待しております。

私も、悩んだり、思いとどまったりした際には、カウンセリングを受けに行かせていただきます!

ふせさん、ありがとうございました。

(制作:わぴあ広報担当 谷田貝 翔)