和光市 松本武洋市長 後編

執筆者 | 20年11月09日 | インタビュー

広沢複合施設整備・運営事業
和光市 松本 武洋 市長

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和光市松本武洋市長のインタビューの前半はこちら

—— 「和光市広沢PFI」では新しい手法として地元の事業者や非営利団体を中心にまとめた「コレクティブインパクト・リスト」を活用されていましたが、どのようなお考えでこれを実施されたのでしょうか?

 「コレクティブインパクト・リスト」は、今回の事業の目玉の部分です。従来型のPFIというと、どうも東京の民間事業者さんが自分たちのグループ企業をワンセットで連れてきて、全部作ってしまって、「はい。良いものができました。にぎわいができました。よかったですね。」となることが多いと聞いていました。これでは地元としては、よそから来た人たちがつくったもので、「自分たちはお客さん」という意識になってしまいます。
 ですので、今回の「コレクティブインパクト・リスト」では、地域にあるいろんな企業や団体を地域の資源と捉えて、どう活かすかという観点からリストを作成しています。
 民間企業の皆さんにプレゼンをやっていただいた中でも、「コレクティブインパクト・リスト」に掲載されている地元企業や団体の活かし方、あるいは、パートナーの組み方というところでも、面白いことができたと思っています。
 PFIの公募プロセスの中でも、地域の企業や団体が活躍して、提案書が出来上がっています。さらにその先に事業が出来上がる過程でも、地域の皆さんの知恵がしっかりと地域を盛り上げるために活かされていくと思っています。そうなると市民の皆さんの満足度も高まると思っています。

—— 和光市広沢地区は、今後「市庁舎にぎわいプラン」が用意されているようですが、どのようなお考えをお持ちなのでしょうか?

 そもそも、この広沢地区は、住宅市街地総合整備事業整備計画という国の制度に基づく計画に従って、エリア全体で開発していく、エリア全体を盛り上げていくというプランニングでまちづくりを進めてきています。ですので、その手法としてエリアマネジメントを行ってまいります。
 この広沢地区には、団地があり、公共施設があり、今度できると広沢複合施設があることになります。その中で、総合的な魅力を向上して、昼間も夜もいろいろな人たちが集まってにぎわう場所にしたいということで「にぎわいプラン」という名前をつけさせていただいています。
 元々、市の広沢地区に対するスタンスは、「官庁街です」、「役所以外はありません」、「それでいいんです、夜は真っ暗で結構です。」という考え方だったんですね。これは当時の行政の考え方としては普通の考え方なのですが、私のような民間企業を経験した人間の立場からすると、つまらないことを言ってるなと思うわけです。
 今回は市の中でも、これをつまらないと思える人しか担当になっていないわけですが、保守的な考えの人からすると、例えば土日に市役所の前に人が居るとなると物騒だと思うわけです。そうではなくて、いつでも人がいて、この地域のいろんな資源を活かして楽しんでいる状態、そういった環境を創りたいと思います。
 広沢複合施設の近隣の樹林公園は、実は人が非常に集まる場所です。市内外、都内、いろんなところから皆さんお越しいただいています。また、西大和団地には新しくスーパーマーケットもオープンしましたので、ぜひこの地域の活力をさらに高めていきたいと思います。
 それから「市庁舎にぎわいプラン」は、立地上、市役所のある場所になりますので、市民参加をもっと進めて市民力を高める場所を目指していきたいと思っています。

—— スタートアップ企業の育成を後押しする「グローバル拠点都市」に和光市が横浜市、川崎市、つくば市とともに都県境を越境して参画する「スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム」が選ばれましたが、これの連携はお考えなのでしょうか?

 そもそもベンチャー支援として、理化学研究所のベンチャー、いわゆる理研ベンチャーを育てるために「和光理研インキュベーションプラザ」をつくり、そこで理研ベンチャーは頑張ってきています。
 インキュベーションプラザはちょっと駅から離れた場所にあるため、広沢地区は中継場所として駅からも程よく近く、広々として環境も良い立地だと思います。保健センターが広沢複合施設の新しい建物に移りますので、その建物の活用を考えていて、理研ベンチャーや活躍できる拠点にしたいと思っています。あるいは、理研だけではなくて和光には本田技術研究所もあって、ホンダの技術者も和光市に住んでらっしゃるので、そういった理研とかホンダとの関りを持つベンチャーが生まれて育って、活躍していくような場所をつくっていきたいなという構想です。

—— 市民の方へメッセージをお願いします。

 これまでの和光市のまちづくりの中で、市政上の課題としては、実は南北で開発の格差があるというご指摘がありました。北側は北口の再開発とか土地区画整理とか254号バイパスという国道のバイパスの事業とか、大きな投資をしているところです。これはこれで必要な投資なんですけれども、一方で、昔から人が住んでいる南側について、ただ街が年老いていくだけではなくて、今回のようにエリアマネジメントをやったり、あるいは、いわゆるPFIで民間活力を持ってきたりと、いわゆる「まちの再生」ということに取り組んでいるわけです。
 あたらしく開発する北側の街が、発展して盛り上がることは良いことですが、南側をはじめとする既存の街についても、「和光市の街はどんどん良くなるよ」というメッセージをこの事業を通じて市民の皆さんにお伝えしたいなと思っています。
 従来からある街並みの発展は、今回のPFI事業をぜひ成功させてそれを起爆剤にしたいと考えています。私は、常に、ただ街ができたら年老いていくのではなくて、街ができたら、今度は、次の姿に進化していく、そういう一つのモデルプランにしたいなと思っております。大いにご期待いただければと思います。

6枚目

(聞き手:一般社団法人和光市広沢エリアマネジメント 代表理事 小松 裕介)