和光市 松本武洋市長 前編

執筆者 | 20年11月02日 | インタビュー

広沢複合施設整備・運営事業
和光市 松本 武洋 市長

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—— 和光市の紹介をお願いします。

 和光市は、埼玉県南部の県境にあるということで、世間的にも非常に交通の便が良いということでよく知られています。全国的には人口が減っているところが多いのですが、和光市は人口が増え続けていまして、現在は約8万4,000人です。これから15年ぐらいの間は人口が緩やかに伸びていくだろうと予想されています。非常に若い街で、平均年齢は40.9歳です。全国的に埼玉県全体も若い方ですが、和光市の平均年齢は県内でも2番目に若くて元気がある街です。

—— 自己紹介もお願いします。

 私は、和光の生まれでも育ちでもなくて、兵庫県で生まれ、20代から和光に住まわせていただいております。出版社等で仕事をした後で、和光市の市議会議員を6年間やらせていただきまして、40歳の時に市長に就任して、今3期目で11年半ぐらい経ったところです。
 私は、民間企業からキャリアを始めたこともあって、民間人の立場から、和光のまちづくりを見ている中で、ポテンシャルを活かしきれていないところが多いなと思っていました。
 これは議員になる前から思っていましたが、例えば川越街道を車で走っていると和光以外の区間はずっとお店の灯りがついているのですが、和光の区間だけは公共施設が多く、夜になると真っ暗なんですね。
 また、私も駅の北側に住んでいたことがあるんですが、ようやく北口の土地区画整理と再開発を合わせてやるということになりました。そのため、今後、東武東上線の駅の中でも最も目立つランドマークが建つことになると思います。
 そういう意味では、和光は非常にポテンシャルがある、この街の可能性にかけて、この仕事に飛び込ませていただきました。

—— 和光市広沢地区について教えてください。

 広沢地区ですが、もともと「広沢ヶ原」という名前がついていたことからも分かるように、本当に広大な平地に、農家さんが仕事をしていたのが戦前です。その後、陸軍が来まして、いろんな訓練をしていた土地が米軍に接収されて、米軍の基地跡地が返還されてからできたのが広沢地区です。ですから、もともと計画的なまちづくりができている地域です。

—— 今回の「和光市広沢PFI」ですが、なぜ公民連携で実施しようと思われたのでしょうか?

 もともと、今回のプロジェクトの場所には、児童センターやプールなどの施設がありました。東日本大震災の余震等の影響でプールが壊れ、その後の施設をどうしていくかという検討の中で、ここは川越街道に面した角地ということで、非常に良い立地を活かしていきたいと考えていました。
 一方で、行政としてはキャッシュフロー的にも厳しい状況でしたので、今回、民間企業のファイナンスと知恵とエネルギーを活かすことで、広沢という土地をより輝かせられないかということを感じて、思い切って、公民連携という形を取らせてもらいました。

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—— 公民連携に際して、行政サイド(和光市)はどのような関わり方になられるのでしょうか?

 今回のプロジェクトは、市民の皆さんからの期待が大きいのですが、多くの情報が飛び交っている中で、市民の皆さんに情報を届けるのは簡単ではありません。ですから、我々としては、パートナーの民間企業の皆さんと一緒に、将来の姿、それから進捗状況などを適時お知らせしていき、市民の皆さんの期待もさらに高めながら、完成まで持っていきたいと思っています。また、「市役所がついていると、仕事が楽だよね。」と、パートナー企業である民間企業の皆さんも、ついつい思いがちなのかもしれませんが、やはり手続きとかは隙のない形でやっていきたいと考えています。

—— それでは、民間企業に期待することは何でしょうか?

 やっぱり民間企業の皆さんが、役所と一番違うところは、経験が豊富で役所にはない技術だとかアイデアだとかを持っていらっしゃるということだと思っています。
 そういったところは、既に提案の際にもいろいろと織り込んでもらったわけですが、今後、ディテールがどんどん作り上げられていく過程でも、民間企業の皆さんには十分に技術やアイデアを発揮してもらいたいと期待しています。

—— 今回の「和光市広沢PFI」ですが、市民の皆さんからも期待が寄せられているとのことですが、どのような声でしょうか?

 もちろん、プールや児童センターなどの公共ゾーンへの期待は大きいですが、今、注目されているのは民間収益施設の温浴施設です。最初は温泉という話はなかったのですが、温泉も掘削することになって、特に高齢者の方々が大きな期待を寄せています。やっぱり民間が入ると違うよねというような話も聞いています。
 最近よく市民の皆さんからも言われるのですけど、このあたりは市内では高齢化が進んでおり、市民の皆さんが年をとってからも楽しい街になるといいなと思っています。
 元々、和光市は、地域包括ケアで、徒歩圏でいろいろなものが揃い、その中でみんなが元気に年を重ねていくということをコンセプトとして、この20年近くまちづくりをしてきています。今回のプロジェクトでは、まさにそれが体現する場所になると思っています。
 お年寄りが辛そうだと我々の世代も将来が心配になるのですが、楽しそうに本当にわいわい盛り上がって生活している地域を創ることで、後の世代も超高齢化社会を安心して迎えられると思っています。
 私は、自分が年を取ったときも、広沢の温泉に入って、その辺をぶらぶらしながら、昔からの仲間とわいわいやるという姿を頭の中で想い描いています。

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(聞き手:一般社団法人和光市広沢エリアマネジメント 代表理事 小松 裕介)