東京建物リゾート 日高毅さん

執筆者 | 20年10月01日 | インタビュー

広沢複合施設整備・運営事業
民間事業者(4)民間収益施設事業者
東京建物リゾート株式会社 日高 毅さん

画像1

—— 会社の紹介をお願いします。

 私どもの会社は、東京建物リゾート株式会社という、不動産の総合デベロッパーである東京建物株式会社の100%子会社で、温浴施設、ゴルフ場、リゾートホテルの運営等を行っております。当社は、これまで温浴施設を12店舗運営して参りましたが、定期借地権の満了に伴って、3店舗を閉店し、現在は9店舗の運営を行っております。
 元々は、1998年に、東京建物グループの新規事業として、「おふろの王様」を展開していく温浴事業を行う株式会社ホットネスが設立されました。その後、2015年に、東京建物グループの再編があり、ゴルフ場運営・管理を行う株式会社ジェイゴルフと、リゾートホテル運営を行う東京建物リゾート株式会社と当社が統合し、東京建物グループの中での余暇事業を担う会社として、新生・東京建物リゾートが誕生し、現在に至っております。

—— 自己紹介をお願いします。

 私は、東京建物リゾート社のホットネス事業部長として温浴事業を任されております。和光市の皆様にもご愛顧いただいている志木店や今は閉店した光が丘店の店長も経験し、花小金井店やこちらも今は閉店した東久留米店のオープニングにも携わっておりました。現在は本社にて各店の運営及びマネジメントを担当しております。

光が丘店外観

1号店「おふろの王様・光が丘店」

志木店外観

3号店「おふろの王様・志木店」

—— 和光市広沢PFIにおける役割を教えてください。

 当社は、PFI事業では特殊ではありますが、SPC(特別目的会社。一般的にPFI事業では、PFI事業を展開するための会社をコンソーシアムに属する民間事業者が設立し、当該SPCが事業主体となって公共等との契約を行うなど事業展開していく。)に所属しているわけではなく、民間収益事業ということで、SPCと協力しながらやっていくという位置づけになっています。
 やはり我々の最大の役割は集客です。この広沢という場所に沢山の人を集めるための施設だと認識しております。温浴施設というのは、小さなお子様からご年配の方まで、幅広い年齢層の方が、ご利用してくれます。このお客様たちと、SPCで展開している公共・民間事業を盛り上げていくのが役割です。今回は、ただ単に温浴事業を展開するだけではなくて、敷地内の広場や温浴施設内に設置するコワーキング・スペース等で、SPCとのコラボ企画を行います。土地全体を利用しながら、幅広い世代の方たちが楽しめる場所、和光市の方々の新たな憩いのスポットを創るのが我々の使命だと考えています。

—— なぜ和光市広沢PFIに応募しようと考えたのでしょうか?

 まずは、我々としては、和光市は非常に馴染みのある土地であるということです。東京都23区で初のスーパー銭湯を出店したのが、「おふろの王様・光が丘店」でしたが、光が丘店といっても、場所としては、赤塚新町にありまして、最寄り駅も和光市とは隣の成増でしたし、そのあと出店した3号店の志木店、2号店の東久留米店、5号店の花小金井店など、和光市に近い場所での出店が多く、エリア戦略ではなく、たまたま地主様とのめぐり逢いの中で、この地域にすごく出店することが多かったので、何の心配も無かったことが理由です。
 そんな中で、一つ私にとってドラマがありました。我々は、土地を購入して店舗展開するのではなくて、地主様から定期借地権で土地をお借りして建物を建設して営業しています。当時、1号店を開設した1999年は定期借地権が最高で20年しかなかったのです。そのため、定期借地権が満了し、1号店を閉めるということになりました。閉店後に建物を取り壊し、土地を更地に戻して、地主様にお戻しする日が、解体工事の遅れもあり、定期借地権の満了日の15時でギリギリでの引き渡しでした。我々としては、1号店を完全に閉店して、土地を地主様にお返しできたという安堵感と、なんか一つ歴史が終わったなという寂しさがあったのです。そしたら、その日の17時に、今回の和光市の優先交渉権を獲得したと連絡がありました。まさにあの日、私は和光市の隣の駅で地主様に1号店の土地をお返しすることをしていたのです。1つの歴史が終わったその日に、隣の駅で新たな歴史が始まったという自分の中ではとてもドラマチックな出来事でした。
 和光市の多くの方々にも、「おふろの王様・光が丘店」を利用していただいておりました。皆さん「王様、王様」と言ってくださっていたので、きっとまた和光市で新しくて、広くて、キレイな「おふろの王様」を展開できると、その方たちの期待に応えらえるのかなと思い、今回、この事業に参画させていただきました。

—— 今回、おふろの王様を出店されるわけですが、具体的なお店のコンセプトなどあれば教えていただけませんか?

 昔の「おふろの王様・光が丘店」というのは、初期のスーパー銭湯ということで、どちらかというと、規模的には小さな店舗でした。当時は、いわゆる一般の公衆浴場のような使われ方、お風呂に入ったらすぐ帰りますというような使われ方をしていました。
 例えば飲食店でいうと、ラーメン屋さんのように食べたらすぐに次の方という、回転数で勝負していくというお店でした。時代も20年が経過し、世の中のみなさん、かなりお疲れということもあり、何もしないことにお金を投資する時代に様変わりしています。そのため、一日ゆっくり過ごしていただけることをコンセプトとしております。
 お風呂だけでいうと、これまで我々が手掛けてきた12店舗の中では1番大きな浴室や露天風呂を計画しています。そして、お風呂からあがった後が重要だと捉え、幅広い年代の方が、ゆっくり疲れを癒す、楽しめる施設を今回は目指しています。今回は3階建ての建物を計画していますが、2階のフロアにはまさに癒しを求める方々が一日ゆっくりできるようなスペースになっています。
 さらには、通常の施設内のレストランだけではなく、広場に訪れる方たちがのどの渇きを癒して、少し小腹がすいたときに軽く食事ができるカフェを併設することも計画しています。最新の設備で、新しい温浴施設を皆さんに提供していきたいと考えています。

5露天

露天風呂イメージ

6内湯

内湯イメージ

—— 今回、新店を出すにあたって、チャレンジだと思われていることは何ですか?

 我々としては今回のような、官・民が一体となる事業は初めてであることです。これまでは、単独での事業を行ってきたため、上手くいくも、いかないも自社のみの責任で済まされましたが、今回はチーム戦のため、この事業に携わる方々との調和が大事だと思っています。
 そこは我々がいて良かったなと、まずは仲間であるSPCの皆さん、当然ですけど、このチャンスを与えてくださった和光市さん、あとは、和光市の市民の方々が本当にいい施設ができたねと思ってもらえるように、施設づくりやサービスを展開していかなければならないと考えています。

—— あのエリア全体から、どのような施設を目指すのかコメントいただけませんか?

 昔は、温浴施設というと、金曜日の夜には、ご家族連れが多くて、小さなお子さんはお風呂からあがった後はみんなパジャマに着替えて、帰ったら寝るだけなんだなというような微笑ましい光景を見ていました。今回の施設もたくさんのお子さんが、明日学校休みだから、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなで待ち合わせして、みんなで遊びにきてくれて、今日はお風呂に入って、ご飯食べて帰ろうかということで、お母さんも帰ったら何もしなくてもいい。そんな日常の中での一コマのような施設になっていきたいと考えています。
 また、ティップネスさんが運営するプールとのコラボレーションだったり、保健センターとの関りであったり、いろいろと企画していきたいと思います。これらの施設で働く人たちにも、お仕事の最後に、ぜひともうちに立ち寄ってもらいたいですね。

—— 市民の方にメッセージをお願いします。

 和光市の皆さんにも、本当にご支援いただいて、頑張ってきた「おふろの王様」です。皆さんの頭の中にも「おふろの王様」って、だいたいこんなものだろうとイメージがあると思うんですよね。今回はその概念を覆すような立派な温浴施設を計画していますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

画像6

(聞き手:一般社団法人和光市広沢エリアマネジメント 代表理事 小松 裕介)