和光市児童発達支援センター 須賀 貴子さん

執筆者 | 21年09月30日 | インタビュー

広沢複合施設整備・運営事業
日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)センター事業団 埼玉事業本部
和光市児童発達支援センター やまぼうし 施設長 須賀 貴子さん

——自己紹介、児童発達支援センターの紹介をお願いします。

 和光市児童発達支援センターの須賀 貴子と申します。
 私は2010年に児童発達支援センターを運営している日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)に入職いたしました。埼玉県内で生活保護を受けている方の就労支援や自立支援、その後働くことが困難な方とお豆腐屋さんを始めたり、就労継続支援B型事業所で障がいのある仲間と菓子製造や農業などに従事し、2021年4月から和光市児童発達支援センターの施設長に着任いたしました。
 現在、児童発達支援センターは全国各市町村で1か所以上設置するという国の方針が出ています。そのような方針のもと和光市に今回やまぼうしが設置されたことは大変嬉しく思っております。
 和光市児童発達支援センターやまぼうしの特徴としては、集団生活において1人1人に合った療育を行っていくこと、施設内に砂場やお山など園庭があることが挙げられます。また、美味しい手作り給食が食べれることも特徴の1つです。9時半~14時まで利用できるので、食事の場面や生活の場面を提供することができます。
また、看護師や作業療法士といった専門職の方々も配置しています。このような専門職の方々に子どもたちの様子を見ながらのプログラム作りや、保育士へのアドバイスなど直接支援してもらうことで質の高い療育を目指していこうと思っています。

——児童発達支援センターでは具体的にどのような業務を行いますか? 

 未就学の子どもを対象とした児童発達支援事業、小学生から18歳までの放課後等デイサービス事業、障がいのある子どもと親御さんの相談支援を行う指定障害児相談支援事業の3つの事業を行っております。
 児童発達支援事業では年齢によって利用時間は異なるのですが、9時半~14時まで受け入れを行っております。朝、登園してきたらまず1人遊びの時間を取ります。1人遊びをじっくりするというのは子どもの成長に欠かせないことですので、1人遊びの時間の確保は必ず行うようにしています。その後は異年齢交流としてリズム遊びや庭でボール遊びをするといった課題遊びを行うなど様々なプログラムを用意して体を動かす時間を取るよう心掛けています。夏には水遊びなどを行い、今年はスイカ割を行いました。子どもたちの成長発達を促すような楽しいことを取り入れるよう心掛けています。あとは日常生活における生活スキルの習得などの支援も行っています。
 放課後等デイサービスでは平日は放課後から17時半までお預かりをしています。当センターでの放課後活動は、子どもにとって学校や家でない場所で自由に遊べるとても貴重な時間です。療育目的を持ちつつ、小学生以上の子どもたちに「放課後」という時間を保証することでたくさんの経験をしてほしいと思っています。ここで様々な経験をすることで地域社会への第一歩を歩んでほしいと思っています。
 指定障害児相談支援事業では市内の他の地域生活支援センターと連携しながら発達がゆっくりめなお子さんにどのような支援が必要か計画相談の最初のプラン策定をやまぼうしで行っています。

——児童発達支援センターを運営するうえで大事にしていることは何ですか?

 長い人生を見たときにやまぼうしで過ごす数年という時間はほんの一瞬に過ぎません。ですがこの数年は子どもたち、親御さんにとってとても大切な時期だと思います。親御さんにとっては一番かわいい時期であると同時に一番悩む時期だと思います。このような時期に子どもの成長をお手伝いする私たちは「子どもたちにどのような人生を送ってもらえたらいいのか」と想像することが大事だと思います。
子どもたちはできないことがたくさんあるかもしれませんが、ただできるようにするだけでなくて社会で生活するうえで困らないように、たとえ困ったとしても友達や周りの大人の手を借りることで前に進める力をここで身につけてほしいと願っています。その子自身が自分らしく将来の人生を選択できる力をこの支援センターで身につけられるようにししたいと思っています。
そのためには子ども1人1人にあった支援が大切であり、得意なこと苦手なことがもちろんあるので、生活年齢と発達年齢に合わせて支援していきたいと考えております。
 また職員のチームワークも大事だと思っています。子どもたちはこういうことに敏感だと思うので大人たちの連携を大事にしていきたいと思います。いい療育をしたい、いいセンターにしたいというのはリーダーだけの想いではなく、全職員共通の想いでもあります。

——どのような支援センターを目指されていますか?

事業所には「すべての子どもの命を輝かせよう」という理念があります。現実として「育てにくさと」いったことも虐待が起きてしまう理由の一つとしてあります。障がいの有無関係なく、全ての子どもたちが本当に大切にされ、その子らしく成長発達ができ、自分らしく暮らせる地域づくりをしていく拠点というと大げさかもしれませんが、その一翼を担えたらいいなと思っています。加えて、障がいへの差別や偏見を無くし、多様な子どもたちへの理解を地域の中に広げていきたいと思っております。
 4月からスタートしたばかりで未熟者ですが、いずれは和光市内の中心となり児童発達支援の底上げをするという役割を担っていきたいという思いがあるのと同時に、そのような機能を私たちは期待されていると感じています。なにより子どもが発達するうえで一番大事な時期にやまぼうしを利用してよかったと思ってもらえるようなセンターになりたいと強く感じています。

——南エリアが開業して半年ほど時間が経過しましたが、児童発達支援センターの今までの状況についてお教えください。

 子どもの利用はまだ少なくこれからという印象です。ですが、子どもの成長は常日頃見受けられていて、我々は皆嬉しく思っています。登園したときに身支度ができるようになったといったような些細な出来事ですが、日々の変化を親御さんと一緒に感じることができるのが楽しみです。
子どもの表情が柔らかくなったりですとか、親御さんの表情が明るくなり積極的に子どもと関わる姿を見ることが本当に嬉しく感じていますし、職員もやりがいを感じているところになります。
 また、肢体不自由の子どもや医療的ケアが必要な子どもの利用がございます。子どもたちにどのようなことが好きなのかとか親御さんと丁寧に会話しながらまずはここに来て楽しい、安心できると思ってもらうことを大切にしながらその子に合った療育を行うことで自立した生活ができるような手助けをしていきたいと思います。

——複合施設「わぴあ」の中で、児童発達支援センターの位置づけ・役割・他施設との連携はどのようにお考えでしょうか?

 全体を見ると多世代の人たちが集える複合施設だと感じています。その中で中心となるのは子どもであるということをすごく感じています。我々は乳幼児期からのお預かりとなりますが、「わぴあ」全体では、中学生、高校生まで多世代にわたって集える拠点であると思います。プールやお風呂、保健センターがあることでこの複合施設を利用してきた子どもたちが大人になっても通える場所がいくつもあるというのは安心して生活できる拠点になる場所であると感じています。
 私個人としては、今後わぴあ全体で子どもフェスタのようなイベントを行えればいいなと思っています。児童発達支援センターは利用契約した人しか通えないので誰もが自由に出入りできる施設ではありませんが、わぴあで行うイベントをきっかけに他の施設に通っている子どもたちと交流をもち、皆で遊んでいる子どもたちの姿を将来見ていきたいと思っています。

——市民の方へメッセージをお願いします。

 やまぼうしは多様な子どもたちが社会への一歩を踏み出すための施設です。一方で原則は利用契約をしている人たちのみの施設利用となります。ですが、色々な子どもがいるからこそ閉鎖的な施設にはしたくないと思っています。今後はやまぼうしのお祭りや、地域交流をする機会を積極的に作っていきたいと思っていますので、そういったことをきっかけに多様な子どもたちへの理解が広がっていければと思っています。
どうかあたたかい目で子どもたちの成長を見守っていただき、地域の方々にも応援していただければ嬉しく思います。

(聞き手:一般社団法人和光市広沢エリアマネジメント 代表理事 小松 裕介)